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2024.05.23

作る場所を訪ねて(佐伯区湯来町 吉野さん) 前編

OKITAの建築では作家さん達の作品を用いることがあります。照明、インテリア、お庭、帆布、いろいろな場面で登場する作家さん達の作品。この連載では、そんな作家さん達の紹介とその「作る場所」をお訪ねしたレポートを書きます。「作る場所を訪ねて」第1回は湯来町の陶芸作家の吉野さんの「作る場所」へ。

【場所】広島市佐伯区湯来町

【作家さん】

吉野義隆(陶芸) / 吉野順子(織物・染織) / 吉野綾(陶芸) /  齊藤徹(木工) /

広島市佐伯区湯来町‥人口およそ5000人。広島市内で唯一の温泉を持つこの土地は、広島市中心部より車で60分程度で到着する、緑の大変豊かな山の中にあります。

 

1970年代、ノルウェーに暮らしながら陶芸作家として活動していた吉野義隆さんは帰国後、自然の中での創作を求めここへやってきました。選んだ場所は、広島の湯来町。当時は今以上に山の中。

そこで吉野さんはなんと自ら家の建築をはじめます。

 

技術や知識を持たず「必要なものは作ればいい」の精神のみ。道具を貸してくれた人、重機を貸してくれた人、資材をくれた人、、、多くの人の協力と支援で家が完成します。時が経ち家族が増え、お子様が大きくなる度にあらたな住み家を自ら敷地内に建ててゆきます。

 

ご主人と周りの方の協力により、DIYで完成した個性的な家々。そのイメージのベースとなっているのは、湯来に移り住む前に滞在していた欧州の住み家。

 

欧米同様、靴のまま過ごす室内、岩で囲まれた壁と暖炉、

私たちにとっての【非日常】が、吉野さんには【日常】であり、生活の場。

演出され作られた世界観とはまったく異なる、リアルな生活の場としての空間、それを感じさせる、異次元の「生活感」に感嘆せざるおえない体験となりました。

 

北欧テイストと、それを覆う深い植物。そしてそこに並ぶ宅配ボックス。まぎれもない「本物」の生活。

 

やがて吉野さんは、家族だけでなく、外から来た人を迎えるため家を建てます。

 

こちらは、家族の吉野妙さんのピアノレッスンの教室として、地域の演奏会の場として建てられたお家。

 

そして建てられた家々には、吉野さんの作品が。

 

家の中に溶け込む吉野さんの作品、それは何の違和感もなく躊躇もなく。生活の一部として芸術や文化が当たり前にある暮らし、それ自体がメッセージのように感じるのでした。「必要なものは作ればいい」。家もアートも。

次回は、自作の工房へ向かいます。